本報では畑地における土壌および肥料成分の流出に焦点を当て,保全対策とその留意点を述べるとともに,植生帯を用いた土壌および肥料成分の流出抑制に関して一連の実験より考察を行った。実験を通して,植生帯は土壌および肥料成分の流出抑制効果がある一方,高濃度の窒素・リンを付着・吸着した細粒土壌を流出してしまう限定的な捕捉特性があり,植生帯に限らず,土壌および肥料成分の保全対策では細粒土壌を如何に分離・滞留させるかが課題となった。また,植生帯の機能維持を目的とした土壌保全システムに関する検討より,今後の土壌保全では従来の土壌の捕捉能に加え,肥料成分の捕捉能とその持続性も評価に加えることが重要となると考察した。