2010年は記録的猛暑となりイネの高温登熟障害が広範囲で発生した。翌年には高温に対応した作付け体系に変更した営農者が多いと考えられたため,検査数量の多い10県の営農者を対象にアンケート調査を実施し,用水需要への影響を考察した。作付け体系のうち田植え時期の変更が最も多く,冷涼な地域で遅植え,温暖な地域で早植えが多くなる傾向がみられた。ただし,田植え時期が出穂日に与える影響は地域で異なり,既存の作物モデルにより高緯度の地域ほど天候の影響が大きく,灌漑期間が長くなる可能性を示した。また,高温時には取水量を減らすよりも増やす営農者が多くなった。すなわち,用水需要は高温年にはピークが高くなり,平年や冷夏年には期間が長くなると考えられる。