農業農村工学会誌
Online ISSN : 1884-7196
Print ISSN : 1882-2770
81 巻, 4 号
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  • 坂田 賢, 友正 達美, 内村 求
    2013 年 81 巻 4 号 p. 269-272,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    2010年は記録的猛暑となりイネの高温登熟障害が広範囲で発生した。翌年には高温に対応した作付け体系に変更した営農者が多いと考えられたため,検査数量の多い10県の営農者を対象にアンケート調査を実施し,用水需要への影響を考察した。作付け体系のうち田植え時期の変更が最も多く,冷涼な地域で遅植え,温暖な地域で早植えが多くなる傾向がみられた。ただし,田植え時期が出穂日に与える影響は地域で異なり,既存の作物モデルにより高緯度の地域ほど天候の影響が大きく,灌漑期間が長くなる可能性を示した。また,高温時には取水量を減らすよりも増やす営農者が多くなった。すなわち,用水需要は高温年にはピークが高くなり,平年や冷夏年には期間が長くなると考えられる。

  • 藤原 洋一, 鳥山 和伸, 藤井 秀人
    2013 年 81 巻 4 号 p. 273-276,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    水稲の高温登熟障害対策として,湛水をせずに土壌を常に湿潤状態に保つ水管理(飽水管理)が推奨される場合があるが,飽水管理による玄米品質への影響を報告した事例はほとんどない。そこで,本報では,湛水区と飽水区を用いて栽培試験を行い,地温などの土壌環境,玄米品質の違いについて考察した。その結果,飽水管理では最高地温は0.5℃高く,最低地温は0.5℃低い結果となった。飽水管理が品質に及ぼす影響は,遅植えなどによる高温回避の効果よりは小さいものの,同じ気象条件下では整粒率の向上,基部未熟粒・乳白粒などが減少する傾向にあり,用水供給側に関係なく適用できる節水栽培であることから,同法は高温障害対策として有効な水管理の一つと考えられた。

  • 志野 尚司, 柄澤 昭司, 田澤 裕之, 山本 和雄
    2013 年 81 巻 4 号 p. 277-280,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    地球温暖化に起因する気候変動の影響が,さまざまな分野で現れている。その影響の1つとして,水稲の高温障害がある。登熟期に猛暑による異常高温にさらされると白未熟粒が発生,米の検査等級が低下し,価格も下落する被害が発生している。このような高温障害に対する水稲の適応技術として,移植時期の繰下げ,肥培管理の徹底のほか適正な水管理の徹底などで対処してきた。本報では,埼玉県北西部に展開している神流川沿岸農業水利事業の受益地において,平成22年夏期に発生した水稲の高温障害とその対応策,特に水管理にかかる事項について述べる。

  • 竹下 伸一, 池上 勝, 平川 嘉一郎, 土田 利一
    2013 年 81 巻 4 号 p. 281-284,a1
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    兵庫県の特産である酒米「山田錦」は,1998(平成10)年以降,出穂,成熟期の早生化が顕著になり,米の充実不足による検査等級の低下や酒造適性の変化が問題となっている。山田錦産地の兵庫県南東部では,平均気温が上昇しており,高温が生育の変化や品質低下の最大の原因と考えられている。そこで,産地などでは,高温障害の発生を予防するための作期の推定システムの構築や水管理による被害の軽減策の研究を行っている。本報では,酒米の特徴および,その高温障害について現在までにわかっていることを整理し,2011年度に実施した産地圃場における夜間の掛流し灌漑による結果を報告する。

  • 島崎 昌彦, 草塲 新之助, 根角 博久, 森永 邦久
    2013 年 81 巻 4 号 p. 285-288,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    地球温暖化のウンシュウミカン栽培への影響は,高温に加え,気象の極端化による多雨と干ばつの頻発による品質低下として顕在化してきている。具体的には,食味の低下,日焼けや浮き皮などの障害果実の増加,着色の遅延または不良などである。わが国においてウンシュウミカンの栽培面積は果樹の中で最大であり,その温暖化対策はきわめて重要である。プラスチックシートによるマルチングと点滴灌水施肥を併用する「マルドリ方式」は,露地栽培において水分・養分制御を行い,ウンシュウミカンの高品質生産を行うために開発された技術であるが,気象の極端化の影響軽減にも効果的であると考えられ,効果の実証試験も行われている。その効果と実証試験結果を紹介する。

  • 木村 匡臣, 飯田 俊彰, 光安 麻里恵, 久保 成隆
    2013 年 81 巻 4 号 p. 289-292,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    水稲の高温障害対策としての掛流し灌漑の実施のためには,十分な量の低温の用水の確保が条件となる。用排兼用水路では,上流側の水田で湛水されて昇温した排水を下流側の水田で反復利用しており,下流側の水田では比較的高温の用水を灌漑していると考えられるため,広域における効率的な高温障害対策水管理方法の策定の際には,このような水田-水路系での水温形成メカニズムの把握が重要な意義を持つ。本報では,用排兼用水路網を利用する手取川七ヶ用水地区を対象とし,観測結果を示すとともに水温の時間的,空間的変動の特性を紹介する。さらに,掛流し灌漑時期の水田排水の水路への還流が用水の水温上昇に与える影響について,数値シミュレーションを用いて考察する。

  • 新村 麻実, 谷口 智之
    2013 年 81 巻 4 号 p. 293-296,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    本報では水田地域を含む小貝川流域を対象に水温変化の状況を時間的,面的に把握した。対象流域内の以下の地点に水位・水温計を設置し,流量と水温を連続観測した。a)本川の上・中・下流と支川(流域全体での水温変化の把握),b)複数の水田地域の取水地点と河川への還元地点(水田地域内での水温変化の把握),c)幹線用水路の上・中・下流(用水路流下過程での水温変化の把握)。その結果,水温は河川や用水路の流下過程で上昇するものの,水田や排水路を通過する過程で低下するので,水田地域を含むことで流域内の水温上昇が抑えられていることが示唆された。また,流下過程での水温上昇には日射量もしくは気温が影響していることが確認された。

  • 西田 和弘, 宇尾 卓也, 吉田 修一郎, 塚口 直史
    2013 年 81 巻 4 号 p. 297-300,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    水稲の高温登熟障害の対策として,掛流し灌漑が注目されており,これによる被害粒の減少が報告されている。一方で,最適な掛流し灌漑方法や掛流し灌漑による高温障害抑制メカニズムは明らかでない。そこで,本研究では,異なる灌漑水量・水深の下で掛流し灌漑試験を行い,水田内の水温分布,高さごとの葉温・群落内気温の測定を行うことで,掛流し灌漑による水温・葉温冷却効果について検討した。その結果,掛流し灌漑による水温低下効果は水口に近いほど大きく,灌漑水量が多いあるいは水深が浅いほど遠方まで水温冷却効果が及ぶことが明らかになった。また,水温低下に伴う葉温と群落内気温低下効果は,群落下部では大きいが,上部ではほとんど認められなかった。

  • 大塚 直輝, 坂田 賢
    2013 年 81 巻 4 号 p. 301-304,a2
    発行日: 2013年
    公開日: 2020/01/10
    ジャーナル フリー

    福井県の一大穀倉地帯である福井・坂井平野において,国営農業用水再編対策事業「九頭竜川下流地区」を実施している。本事業は,老朽化した農業用水をパイプライン化し,あわせて地区内の農業用水の再編を行うものである。事業効果の一つに,米の品質向上が挙げられる。米の登熟期である夏場の高温が近年,米の等級を下げる要因となっており,これに対して九頭竜川中流部で取水された冷たい水を,パイプラインを経由して夜間に灌漑することで,水田の温度上昇を抑制することが期待される。パイプラインが一部供用を開始して以降,夜間灌漑実証試験を関係機関と連携して実施しており,この取組みおよび収穫米の評価について紹介する。

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