わが国の技術協力は途上国の発展に大きく貢献し,高い評価を受けてきた。こうした協力には,高度な技術パッケージの輸出にとどまらず,わが国の長い歴史の中で培われた知識や経験,ノウハウの現地への適用といったものも含まれる。本報では,貧困ライン以下で暮らす人々が人口の約6割を占めるザンビア国北東部において,日本で古くから実践されてきた簡易な灌漑技術を同国の農業普及システムを活用して広域普及している取組みについて紹介する。これは,技術の「深化」や「高度化」といったこれまでのアプローチとは異なり,技術の「簡易化」により「適用性」を高めていくという新しい視座を提供するものである。