農業農村整備事業において環境との調和へ配慮した整備が実施されるなか,国営総合農地防災事業「サロベツ地区」では,農業と湿原との共生・共存を目的とした全国でも例を見ない大規模な環境配慮措置として,「緩衝帯」の設置を実現した。加えて,環境配慮型事業の効用は,地域として享受することから,今後の維持管理においては,農業者だけでなく,周辺住民を含む多様な主体の参加が期待される。このとき,地域のさまざまな考え方や立場の人々を含めた合意形成が課題であり,難しさである。本報は,「緩衝帯」の実現に至る行政および地域の取組みを紹介し,その経緯から計画,維持管理などの課題における関係者の合意形成のポイントを述べる。