2020 年 88 巻 3 号 p. 197-200,a1
農業の労働力不足問題を外国人旅行者などの農村外からの人材の呼び込みによって解決することを目指し,全国規模の職業仲介システムを展開しているオーストラリアの事例を取りあげ,季節的農業労働力調整システムの仕組みと運用実態を報告する。オーストラリア政府は,農業者が安定した農業労働力を確保できるようさまざまな取組みを行ってきた。たとえば,地域ベースの収穫労働仲介事業,全国ベースの収穫労働情報提供事業,ハーベスト・トレイルの展開,ワーキング・ホリデー制度の規制緩和などである。日本農政も農業労働力の確保に本腰を入れる時期に来ており,現場動向を捉えつつ社会的な農業労働力ネットワーク・システムの整備を検討すべきである。