オーストラリアでは水政策改革の一環として,行政機関の一部門として運営されてきた灌漑用水供給事業を会社化し,効率的なサービス供給ができる組織に転換した。こうした灌漑事業体の会社化をめぐって,組織デザイン,ガバナンス構造,事業計画マネジメント,ベンチマーキングといった経営的特徴を明らかにする。そこから汎用的な枠組みを析出し,短・長期的な視座から日本の土地改良区の運営問題に対する示唆を論じる。具体的には,戦略的なマネジメントができる土地改良区への改革とともに,選好が異なる農業経営体が内包される組合員の,それぞれにとって合理的となるサービスの提供方法と費用負担原則を追求する抜本的な制度改革を考える。