廃棄物資源循環学会論文誌
Online ISSN : 1883-5899
Print ISSN : 1883-5856
ISSN-L : 1883-5856
論文
廃棄物溶融炉用クロム含有耐火物からの6価クロム化合物の生成機構に関する基礎的研究
水原 詞治占部 武生山口 明良前田 朋之
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 21 巻 5 号 p. 170-177

詳細
抄録

廃棄物溶融炉で用いられるクロム含有耐火物は優れた耐食性を示すが,その一方で,スラグとの反応により6価クロム化合物を生成する懸念がある。本研究では,Cr2O3粉末にCaO, SiO2, Al2O3粉末を混合し,加熱温度を変化させた加熱試験を行った。その結果,1,300~1,500℃で2時間加熱した後水冷した試料中に,XRD分析により6価クロム化合物であるCa4A16CrO16が検出された。これより,1,300℃以上の高温域では,CaCrO4がAl2O3により安定化されていることが示唆された。また,この化合物には溶出性があることがわかった。回転侵食試験で得られた水冷スラグ断面のEPMA分析により,耐火物から剥離したと思われるCr2O3骨材の表面にスラグ中のAl2O3, CaOが浸潤していることがわかった。これより,Cr2O3骨材の表面にCa4A16CrO16が生成している可能性があることが考えられた。このスラグからのCr(VI)の溶出は問題になるレベルより低かったが,Cr(VI)の溶出を安定的に基準以下に保つにはCr2O3骨材の剥離の抑制などに努める必要がある。

著者関連情報
© 2010 一般社団法人 廃棄物資源循環学会
前の記事 次の記事
feedback
Top