廃棄物溶融炉で用いられるクロム含有耐火物は優れた耐食性を示すが,その一方で,スラグとの反応により6価クロム化合物を生成する懸念がある。本研究では,Cr
2O
3粉末にCaO, SiO
2, Al
2O
3粉末を混合し,加熱温度を変化させた加熱試験を行った。その結果,1,300~1,500℃で2時間加熱した後水冷した試料中に,XRD分析により6価クロム化合物であるCa
4A
16CrO
16が検出された。これより,1,300℃以上の高温域では,CaCrO
4がAl
2O
3により安定化されていることが示唆された。また,この化合物には溶出性があることがわかった。回転侵食試験で得られた水冷スラグ断面のEPMA分析により,耐火物から剥離したと思われるCr
2O
3骨材の表面にスラグ中のAl
2O
3, CaOが浸潤していることがわかった。これより,Cr
2O
3骨材の表面にCa
4A
16CrO
16が生成している可能性があることが考えられた。このスラグからのCr(VI)の溶出は問題になるレベルより低かったが,Cr(VI)の溶出を安定的に基準以下に保つにはCr
2O
3骨材の剥離の抑制などに努める必要がある。
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