抄録
本研究の目的は,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意識に影響を与えている要因を明らかにすることである。調査対象地域は,焼却処理に比較的長い歴史を持つ名古屋市と,焼却処理が開始されて間がないソウル市とし,アンケート調査を通じて検討を行った。その結果,名古屋市とソウル市の両都市において,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意識と,汚染物質の排出などの「直接的影響」に対する懸念との間には明確な関係は認められなかった。他方,名古屋市・ソウル市ともに「行政との信頼関係」は,焼却施設を運営する自治体のごみ処理政策に対する住民の受容意向において重要な影響要因であることがわかった。以上から,自治体のごみ処理政策に対する地域住民の受容意識を向上させるためには,焼却処理の安全性だけではなく,行政に対する住民の信頼を得ることが重要であると考えられる。