抄録
現在日本では年間1,400万tonもの食品廃棄物が焼却または埋立処分されている。本研究では,野菜くず,乾燥調理くず,およびバナナ果皮を培地用素材としてブナシメジ栽培を行った。菌糸の生長はYMG培地に比較して野菜くず培地でやや劣り,バナナ果皮培地ではさらに悪かったが,どの培地も菌糸を生長させることができた。子実体はすべての培地で形成された。これらの結果より,菌糸生長培地用素材として野菜くずが,子実体形成培地用素材として野菜くず,乾燥調理くず,バナナ果皮が有用であり,食品廃棄物の再生利用に応用できる可能性が示された。特に野菜くずは菌糸生長から子実体形成において一貫して生長が良好で,最も有用な培地用素材であることがわかった。さらに,栽培途中の野菜くず培地を冷凍保存し,自然解凍後に栽培を再開しても子実体の形成が確認された。これは食品廃棄物を利用した家庭用ブナシメジ栽培キットの開発に応用できる可能性を示している。