抄録
焼却残渣の溶融メタル中に,銅・鉛等のベースメタル以外に,金・銀等の貴金属類が含まれている。このことを利用し,焼却残渣を集約して溶融処理を行い,非鉄製錬施設において山元還元する技術がある。本研究は,この集約型還元溶融に注目し,従来のセメント原料代替やエージングによる路盤材利用と資源性,LCCO2 を比較した。
まず既存文献および実稼働施設のプロセスデータをもとに,マテリアルフロー解析を行った。次に回収金属が天然金属鉱石をどれだけ代替するか (資源代替性) を,焼却残渣埋立処分をベースシナリオとして評価を行った。その結果,集約型還元溶融における焼却残渣 1 ton は,銅・鉛・亜鉛精鉱を数 kg~十数 kg 程度,金・銀鉱石を 1 ton 程度それぞれ代替すると推計された。一方,LCCO2 算定では温室効果ガス (GHG) 排出量が増加するものの,将来的な電力構成の変更,立地場所の最適化により,埋立処分よりも削減される可能性があることが示された。