抄録
都市ごみ焼却処理施設においては,通常,ごみバンカ内から採取された標本の定期測定結果が主要なごみ質情報源になっている。このうち,低発熱量は施設稼働実績の評価検討に必須の情報であるにもかかわらず,標本分析による値は実際に焼却処理されたごみの平均低発熱量算出には不適当な場合がある。
そこで,著者は,相対的に安定な燃焼ガス物性値の活用を提案し,理想ボイラ効率 (IBE) を介して処理ごみの平均低発熱量推定値を提示してきた。
本稿では,主として 2012~2017 年度における東京都区部可燃ごみ処理に関する利用可能なデータに基づき,精緻化した IBE 線図を介して処理ごみの低発熱量を統計解析する手法を提示し,その方法によって焼却炉への入熱の評価・検討に活用できる十分な精度の低発熱量の統計量を算出した。その結果,原ごみ標本データに不可避の偏差が含まれていても本統計解析により十分利用可能な一連の低発熱量関係変数を抽出できることが示された。