廃棄物資源循環学会論文誌
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30 巻
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論文
  • 庄司 貴, 飯野 翔太, 高橋 克行, 鹿島 勇治, 小山 陽介, 山本 貴士, 大迫 政浩
    2019 年 30 巻 p. 1-13
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/02/20
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所事故に由来する放射性物質汚染廃棄物を処理するために設置された,仮設焼却施設におけるバグフィルタの粒子除去性能の評価を目的に,バグフィルタ入口側および出口側にて焼却炉排ガス中の PM10 を粒径別に測定した。出口側の粒子個数濃度はいずれの粒径も 100 個 cm-3 未満であり,入口側濃度と比べて 1 万分の 1 から 100 万分の 1 程度であった。バグフィルタの部分集じん率はいずれの粒径も 99.9 %を上回ると評価された。バグフィルタの払い落とし操作は瞬間的にバグフィルタ出口の粒子質量濃度を増大させるが,払い落とし操作時の PM10 の質量基準除去率は 99.78 %であった。払い落とし操作を含む集じん装置全体の PM10 の質量基準除去率は 99.99 %であった。
  • ――保有水等の流出の観点から――
    宮原 哲也, 八村 智明, 大野 博之, 小坂 英輝, 細野 賢一, 山内 一志, 山中 稔
    2019 年 30 巻 p. 14-28
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー
    既設の一般廃棄物最終処分場において不適正な状況を改善するための適正化事業を行った。不適正な最終処分場では,埋立地からの保有水等の流出が懸念材料となることが多く,この最終処分場においても,周辺環境の保全の観点からの調査を実施し,その調査を用いた数値シミュレーション等を実施した。
     本研究の結果,廃棄物埋立地内の保有水等の水位が高いとき,現地の地下水位や水質観測の結果と整合する埋立地外への保有水等の流出が生じる可能性のあることが明らかとなった。この恒久対策として,埋立地内の水理ポテンシャルを周辺地下水のそれよりも下げる工法 (ウォーターバリア工法),たとえば集水井工の設置が有効であることが数値シミュレーションにより示された。この工法は,周辺環境の保全に有効なだけでなく,力学的安定性にも有効な工法であり,施工性・コスト面でも優れている。
  • 田村 賢, 杉山 耕平
    2019 年 30 巻 p. 29-37
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/08
    ジャーナル フリー
    カキ殻の有効利用法を開拓し,廃棄カキ殻の利用価値を向上させるために,本研究ではカキ殻粉末が陶器釉薬として容易に利用できるよう,施釉・焼成方法を確立した。ハンマーミルを用いて作製されたカキ殻粉末が市販の精製 CaCO3 粉末の代替品として釉薬の原料に使用できることを確認し,カキ殻粉末と粘土の混合系においてカキ殻粉末が過不足なく粘土と反応し,質の良いガラス層が得られる配合割合と焼成条件を明らかにした。鉄分や他の不純物元素を少量含んでいる天然粘土 (信楽粘土) とカキ殻粉末の混合系ではカキ殻粉末の配合割合が 30 wt% と 33 wt% のものが焼成温度1,200℃で溶融する。このうち,流動性に優れるのは 30 wt% のものであった。この配合割合 30 wt% のものを釉薬とし,実用品 (皿) として造形した素焼き基材の表面に塗布して焼成 (1,250℃で 1 h 保持) した結果,高い表面品質をもつ製品が得られた。
  • 久保田 洋, 繁泉 恒河, 肴倉 宏史, 佐藤 研一
    2019 年 30 巻 p. 48-61
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/10
    ジャーナル フリー
    焼却主灰のオンサイトでの安定化促進を目的として,散水処理による塩類等の洗い出しと組み合わせることが可能なPb不溶化処理の検討を行った。不溶化処理として,炭酸水素ナトリウム (SHC),リン酸 (PA),有機キレート (OC) の水溶液を散布する「薬液散布処理」ならびに CO2 ガスを用いた「促進炭酸化処理」について,カラム試験により検証した。
     薬液散布処理では,すべての薬剤で Pb 不溶化効果は認められたが,SHC 区,PA 区は主灰中の Ca とも反応が進み,カラム下層での効果の低減が示唆された。一方,OC 区では全層で Pb 濃度は 0.01 mg L-1 まで低下することが明らかになった。促進炭酸化処理では,CO2 供給量 30~40 g kgDW-1 程度を閾値に Pb 濃度の低下がみられた。CO2 濃度を 100 % から 10 % に変えた場合でも,ほぼ同等の効果が確認された。また散水処理と炭酸化処理の順番についても,その影響を調査した。
  • ――滋賀県の事例研究――
    渡辺 梓, 長野 朝子, 立尾 浩一, 橋本 征二
    2019 年 30 巻 p. 62-72
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/30
    ジャーナル フリー
    2000 年以降,全国の一般廃棄物のリサイクル率は上昇傾向にあったが,近年は頭打ちとなっている。この理由の一つとして,自治体の処理・再資源化ルートを経由しない未把握の一般廃棄物フローの存在が指摘されている。本稿ではその推計方法を整理するとともに,より適切な推計方法を提案し,これを滋賀県に適用して未把握のフローを含めたリサイクル率 (真のリサイクル率) を推計した。具体的には,小売業者による店頭回収量,再資源化業者による回収量,産業廃棄物への混入量の推計方法を整理・提案した。滋賀県に適用した結果,未把握の資源化量は全資源化量の約 50 % と推計され,真のリサイクル率は現行のリサイクル率を約 13 % 上回った。ただし,真のリサイクル率も現行のリサイクル率もほぼ同じ推移を示したことから,滋賀県については,未把握の一般廃棄物フローの存在が,必ずしもリサイクル率頭打ちの理由になっていないことが示唆された。
  • 友野 和哲, 坂本 遼, 槿 優衣, 岡田 雅広, 八幡 侑馬
    2019 年 30 巻 p. 73-79
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/05/31
    ジャーナル フリー
    さまざまな反応条件下,鉄の存在下で金属級シリコン (MG-Si) の臭素化反応を流通式反応装置で行った。HBr 転化率と SiHBr3 選択率に関して Si 試料の反応性を評価し,二酸化ケイ素 (SiO2) に加水分解した後,純度分析を行った。ブロモ化反応により得られた生成物中の金属元素の濃度は,反応前の MG-Si に比べてはるかに少なかった。鉄の添加は不純物の増加をもたらさなかった。むしろ,鉄を添加することで鉄の触媒と考えられる作用により,380~400 ℃ の温度領域において反応速度の改善をもたらしたと考えられる。鉄の存在下でのブロモ化反応の活性化エネルギーは 129kJ/mol と推定された。
  • 河合 萌子, 中谷 隼, 栗栖 聖, 森口 祐一
    2019 年 30 巻 p. 80-94
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/22
    ジャーナル フリー
    中国の固体廃棄物輸入規制の影響で,これまで一部を輸出に依存してきた日本の使用済ペットボトルのリサイクルシステムは再検討が求められている。その設計にあたっては,回収量や再生処理能力に加え,再生樹脂の受入可能量も制約となるため,ポリエチレンテレフタレート (PET) 樹脂を原料とした製品の物質フロー全体に基づいた議論が欠かせない。本稿では,リサイクルシステムを検討する上でのシナリオ設計の枠組みを構築し,国内で回収される使用済ペットボトルを対象として適用した。まず,国内のPET樹脂製品の物質フロー分析をもとに,再生PET樹脂の用途ごとの受入可能量を推計した。さらに,再生樹脂利用に関するヒアリングおよび文献調査から,回収ルートおよび再生処理技術ごとに,再生樹脂の利用先における受入可否を調査および整理した。これらの再生樹脂の量的および質的な制約のもとで,国内処理を前提とした循環利用シナリオを提案した。
  • 高崎 力也, 山田 剛史, 西村 宗樹, 蒲原 弘継, 熱田 洋一, 大門 裕之
    2019 年 30 巻 p. 95-102
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/06/30
    ジャーナル フリー
    近年,養豚農家の多くが,ふん尿処理時に発生する臭気の抑制や放流水の水質基準を満たすという課題に直面している。こうした課題に対し母豚数 100 頭の中規模養豚農家を対象とした小規模普及型メタン発酵システムを開発し,2016 年 4 月から養豚農家へ導入した。本システムは、中規模養豚農家が導入できる価格を意識し低廉化したものである。本研究では,システムの炭素・窒素フローおよび発電実績や導入効果を明らかにした。その結果,メタン発酵において原料中の炭素の内,51 % の炭素がバイオガスに分解された。発酵槽から排出される消化液は養豚農家の排水処理設備で適切に脱窒処理が行われていることがわかった。また,バイオガスによる月間発電量は,約 9,900 kWh であり,バイオガス発電の買取価格を 39 円/kWh とすると,年間売電収入は約 450 万円となり,本システムにおいてはシステム導入費を約 11 年で減価償却できることが示された。
  • 篠 靖夫
    2019 年 30 巻 p. 103-112
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/08/31
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却処理施設においては,通常,ごみバンカ内から採取された標本の定期測定結果が主要なごみ質情報源になっている。このうち,低発熱量は施設稼働実績の評価検討に必須の情報であるにもかかわらず,標本分析による値は実際に焼却処理されたごみの平均低発熱量算出には不適当な場合がある。
     そこで,著者は,相対的に安定な燃焼ガス物性値の活用を提案し,理想ボイラ効率 (IBE) を介して処理ごみの平均低発熱量推定値を提示してきた。
     本稿では,主として 2012~2017 年度における東京都区部可燃ごみ処理に関する利用可能なデータに基づき,精緻化した IBE 線図を介して処理ごみの低発熱量を統計解析する手法を提示し,その方法によって焼却炉への入熱の評価・検討に活用できる十分な精度の低発熱量の統計量を算出した。その結果,原ごみ標本データに不可避の偏差が含まれていても本統計解析により十分利用可能な一連の低発熱量関係変数を抽出できることが示された。
  • 篠 靖夫
    2019 年 30 巻 p. 113-121
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/19
    ジャーナル フリー
    実稼働している都市ごみ焼却処理施設の発電成績を評価する指標のうち単位ごみ焼却量あたりの発電電力量は精確に計量できるが,WtE システム自体を評価する発電端効率は一定程度の誤差を免れられない。処理ごみ低発熱量を精確に確定することが難しいからである。
     そこで,著者は,相対的に安定な燃焼ガス物性値に基礎をおく理想ボイラ効率を介して算出された処理ごみ平均低発熱量推定値を用いて年度入熱の精度を高め,WtE システムの系統的な解析を実施した。
     本研究では,2012 ~ 2017 年度に東京都区部において稼働実績のある 22 の可燃ごみ焼却処理施設に関する利用可能なデータを主として用い,処理ごみ質や空気比がそれぞれ異なる燃焼条件のもとで各システムのエネルギー変換に関する応答を調べた。その結果,新旧施設の交代に伴い稼働系全体の発電端効率は 0.145 から 0.155 まで 6.9 % 上昇したことがわかった。
  • 山﨑 奈都美, 竹中 希美, 冨永 亜矢, 道上 哲吉, 高取 永一, 関口 博史, 中野 涼子, 八尾 滋
    2019 年 30 巻 p. 122-131
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/10/29
    ジャーナル フリー
    近年,廃棄プラスチックの有効なリサイクル手法の確立が極めて重要な課題となっている。しかしながら,廃棄プラスチックの力学物性は,バージン品と比較すると非常に劣るのも事実である。
     この原因は,化学劣化のためであると信じられていた。しかし最近われわれは工場内リサイクルポリプロピレンを使用した研究から,この低下は再生可能な物理的な劣化であることを見出した。さらにポリプロピレン成分選別容器包装リサイクルプラスチックに関しても適用性を検討し,同様に力学的特性が改善できることを見出した。
     本研究では,非選別の容器包装リサイクルプラスチックに対しても,力学特性が再生可能であるかの検討を行った。その結果,成形条件を変えることで力学特性が大きく向上することを見出した。この結果は,容器包装リサイクルプラスチックが種々の付加価値のある分野に適用できることを示している。
  • ――テレビについてのケーススタディ――
    増田 明之, 松本 凱斗, 村上 進亮
    2019 年 30 巻 p. 132-143
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/11/07
    ジャーナル フリー
    消費者の制度理解の向上のみに依存して適正廃棄行動を促進することには限界がある。たとえば 2001 年から施行されている家電リサイクル法では,使用済み製品の回収率向上は依然として課題である。使用済み製品の回収促進策としてはデポジット制度の導入も考えられるが,預り金の支払いによる製品需要の低下も懸念される。そこで本論は家電リサイクル制度におけるデポジット制度を例にとり,制度に関する情報提示とコストの負担感の軽減の関係について分析した。本論では現行の家電リサイクル法におけるデポジット制度の概形を提示し,行為目標の同定の観点から消費者の製品属性に対する評価への介入モデルの設計を行った。負担感の推定にはコンジョイント分析を用い,テレビを例としてモデルの有効性を検証した。分析結果から預り金の支払いは消費者にとって負担として認識されていること,また同定の操作は負担感の軽減に有効であることが示唆された。
  • 大渕 敦司, 藤井 健悟, 小池 裕也
    2019 年 30 巻 p. 144-152
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/12
    ジャーナル フリー
    都市ごみ焼却飛灰中の結晶相を XRD, 主成分元素を XRF, 重金属元素を ICP-AES により定量分析した。さらに都市ごみ焼却飛灰を粒度分けすることで結晶・元素組成の粒径依存性を評価した。重金属元素濃度の粒径依存性により,Mn, Ni は粗大粒子として,Se, Cd, Pb は微小粒子として存在していることが示唆された。特に Cd と Pb の粒径依存性は他の重金属元素に比べて顕著であり,これら元素の大部分は微小粒子として存在している可能性がある。環告 13 号試験による溶出試験結果からは,Sr と Pb の溶出が認められ,それら元素の一部は塩化物として存在していると考えられる。Cd と Pb 濃度はMgO, Al2O3, SiO2, CaO 濃度と高い相関係数を示し,これら元素とケイ酸塩や複合的な塩類を形成,またその一部は非晶質として存在している可能性がある。
  • ――愛知県を対象としたケーススタディ――
    牧 誠也, 大西 悟, 藤井 実, 後藤 尚弘, 五味 馨
    2019 年 30 巻 p. 153-165
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/18
    ジャーナル フリー
    広域処理計画の支援や発電・熱利用等のエネルギー回収の要望から,収集運搬を含む総合評価システムの構築が求められている。しかし,収集運搬評価に用いられてきた従来のグリッドシティモデルは,非線形性をもつため,広域化・エネルギー回収の検討に応えきれず,地域特性評価が困難であった。そのため,地域特性等を含めかつ広域適用可能で,簡易に計算可能な収集運搬モデルを構築する必要性がある。
     本研究では,従来モデルの修正モデルを開発した。そのケーススタディとして愛知県を対象地とし,運搬は最適化問題,収集は重回帰モデルを用いて,公開の統計情報によって収集運搬による費用および CO2 排出量を計算・評価可能な収集運搬モデルの構築を行った。
     その結果,いくつかの労働時間給区分で再現性の高い回帰モデルを構築し,線形の収集運搬モデルを開発でき,収集運搬による費用・CO2 排出量,地域特性を評価可能なモデルを開発できた。
研究ノート
  • 笹尾 俊明
    2019 年 30 巻 p. 38-47
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/03/23
    ジャーナル フリー
    EU諸国内で最高水準の容器包装リサイクル率を達成しながらも,比較的低費用でその運用を行っている国がベルギーである。ベルギーでは,日本とほぼ同時期に容器包装廃棄物リサイクルの制度が導入され,家庭系の容器包装廃棄物については事業者団体 Fost Plus と自治体が連携して,リサイクルを行っている。本研究では,国内で紹介されることの少ないベルギーの容器包装リサイクルについて,最新のデータをもとに物量的側面と財政的側面から報告する。そして,日本の容器包装リサイクルとの比較を通じて,ベルギーにおける容器包装リサイクルの費用効率性の要因を分析し,効率的なリサイクルのあり方について検討する。
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