2019 年 30 巻 p. 95-102
近年,養豚農家の多くが,ふん尿処理時に発生する臭気の抑制や放流水の水質基準を満たすという課題に直面している。こうした課題に対し母豚数 100 頭の中規模養豚農家を対象とした小規模普及型メタン発酵システムを開発し,2016 年 4 月から養豚農家へ導入した。本システムは、中規模養豚農家が導入できる価格を意識し低廉化したものである。本研究では,システムの炭素・窒素フローおよび発電実績や導入効果を明らかにした。その結果,メタン発酵において原料中の炭素の内,51 % の炭素がバイオガスに分解された。発酵槽から排出される消化液は養豚農家の排水処理設備で適切に脱窒処理が行われていることがわかった。また,バイオガスによる月間発電量は,約 9,900 kWh であり,バイオガス発電の買取価格を 39 円/kWh とすると,年間売電収入は約 450 万円となり,本システムにおいてはシステム導入費を約 11 年で減価償却できることが示された。