日本看護研究学会雑誌
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高齢者の大腿骨頚部骨折手術 退院後の歩行機能の変動と影響要因
遠藤 千恵子
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1987 年 10 巻 3 号 p. 3_7-3_15

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抄録

 この研究は高齢者の大腿骨頚部骨折手術後の歩行機能について退院後の変動を知ることであり,また歩行機能の改善と低下に影響する要因を明らかにすることを目的とした。
 対象は過去11年間(1970―1980)にT老人医療センター,整形外科病棟を歩行出来る状態で退院した大腿骨頚部骨折患者231名中生存していた98名であった。現在の歩行機能(独歩,T杖歩行,歩行器歩行および歩行不能の区分)や日常生活動作能力(食事など8項目)を尋ねる質問を郵送によって回答を得た。また承諾者には面接と観察により資料を得た。歩行機能の変動は退院時と比較し改善,低下を分析した結果は次のとうりであった。
 1) 対象の平均年令は82歳(sd 6),男女1:7,一般高齢者と比べ日常の活動性は有意に低いという特徴があった。
 2) 歩行機能の出現割合は多いものからT杖歩行34.7%,独歩27.6%,歩行不能19.4%,歩行器歩行18.4%であった。
 3) 最良歩行機能の時期は,退院後平均7.8ケ月(sd 10)であった。
 4) 退院後,歩行機能の改善は,70.5%の人にみとめられた。この出現割合は手術後年による相違のないことが明らかであった。
 5) 車椅子使用例の歩行機能は改善と低下に半数づつわかれていた。
 6) 骨粗鬆症例の歩行機能は88%に改善がみられた。しかし痴呆症の歩行機能は70%が低下していた。
 7) 高齢者の退院後の歩行機能の改善と低下に明らかな影響が見られたのは,日常生活動作能力であった。
 以上,結論として高齢者の大腿骨頚部骨折手術後のケアの要締は,歩行機能の改善と日常生活動作の維持に努め,高齢者が人生を充分に活きることに寄与することである。
 付 記
 この研究の要旨は第13回看護研究学会(東京)で発表した。
 また,この研究は(財)東京都老人総合研究所「骨の老化」プロジェクト研究の一環としておこなわれた。

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© 1987 一般社団法人 日本看護研究学会
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