日本看護研究学会雑誌
Online ISSN : 2189-6100
Print ISSN : 2188-3599
ISSN-L : 2188-3599
個人の健康障害がその家族にあたえる影響について;文献総覧
新免 いづみ河野 千文野島 良子
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 10 巻 3 号 p. 3_42-3_49

詳細
抄録

 (1)個人の健康障害によってその家族にはどのようなクライシスが生じるか,(2)その場合,彼らは誰にどのようなソーシャル・サポートを求めるかという問題に関して,現時点での研究の集積を明らかにし,今後の研究課題と方向を知るために,1978年から1986年6月までの間に国内外で発表された,「家族」に関する研究文献90件,「ソーシャル・サポート」に関する研究文献52件,合計140件(両者重複2件)を総覧し,以下の知見を得た。
 数量的動向をみると,(1)「家族」に関する文献数は1982年の7件をピークに,以後減少し,86年には0件になっている。(2)研究方法は事例研究が年々減少傾向にあり,調査研究は増加傾向にある。国内では事例研究数が調査研究数を上回っているが,国外ではその逆の傾向が示されている。(3)研究項目は(a)個人の健康障害がその家族に与える影響について研究されたものが33件と最も多く,(b)看護婦による家族への援助,12件と(c)家族のニード,11件がこれに次いで多かった。「ソーシャル・サポート」に関する(1)文献数は年をおって増加してきているが,国内においては85年に1件,86年に2件を示すのみである。(2)研究項目はソーシャル・サポートの概念に関するものが最もおおかった。
 文献内容を研究目的に沿った5編の論文についてみると,(1)家族の直面するクライシス,(2)家族が求めるサポート,(3)家族が求めるサポートと疾病の段階,(4)ソーシャル・ネットワークの4テーマに分類することができる。疾病の段階によって家族が求めるサポートの質と量に相違があることは示唆されているといえるが,用いられている研究方法,尺度,対象にバラつきがあり,これらの研究結果からただちに何らかの一般化をおこなえるところへは至っていない。

著者関連情報
© 1987 一般社団法人 日本看護研究学会
前の記事
feedback
Top