1991 年 14 巻 2 号 p. 2_61-2_68
安全で,安楽な床上排便介助の方法を明らかにするための基礎的研究を行った。健康な成人女子10名を被験者として,排便の安楽体位として日常用いられている,30°半座位での努責方法について,そこに生じる腹圧と,筋電図による腹壁筋の緊張状態及び循環系への影響を脈拍数,血圧,血圧回復時間の変化として実験的に検討し,以下の結果を得た。
1) 努責時の肺内含気量が多いほど,腹腔内圧は高くなり,これは胸腔内圧に関連し,循環系への影響が大きかった。
2) 下肢屈曲姿勢での努責は,効率的に高い腹圧が得られた。
3) 下肢屈曲,呼気時努責が循環系への影響が少なかった。
4) 息止めせず腹壁緊張のみでも,排便誘発・促進に有効と考える腹圧が得られる。
5) 臥床排便介助時,下肢を屈曲させ,呼気時に努責を意識しないで腹に力を入れる,いきみ指導が合理的である。