抄録
本研究は,看護学生の自我同一性地位の因子構造を,看護学生の属性群別に比較して職業的同一性形成の経過を調べた。
方法は,平成3年度のN大学医療技術短期大学部の看護科学生235名を対象に,自我同一性地位テストを実施した。
1) 因子分析の結果,職業的領域では同一性達成,モラトリアム,同一性拡散,価値領域では早期完了(IおよびⅡ),モラトリアム,同一性拡散その他の8因子が確認できた。
2) 因子分析から抽出した職業的領域での同一性達成,モラトリアム,同一性拡散の3因子について学年,希望職種,受験時の両親の反応,祖父母の同居,看護経験,家族の死亡などによる関連を調べた。
(1) 学年に関して群別に比較すると,職業の同一性達成因子は,第1学年で高いが第2学年で低くなり第3学年でやや戻っている。職業の同一性拡散因子は,第1学年から第3学年にかけて高くなり,職業のモラトリアム因子は高学年ほど低くなっていた。(2) 入学時の希望職種が看護婦の職種を希望した場合は,看護婦以外の職種を希望した場合よりも,職業のモラトリアム因子が低値であった。(3) 看護科を受験することに関して,父親が賛成した場合は,反対した場合よりも同一性達成因子が高値であった。(4) 祖父母と同居している場合は同居していない場合よりも,職業の同一性達成因子が高値であった。(5) 家族が病気の時に看護経験がある場合は経験がない場合よりも,職業のモラトリアム因子が高値であった。(6) 家族または身近な人の死亡を経験している場合は経験していない場合よりも,職業の同一性達成因子が高値であった。