2001 年 24 巻 5 号 p. 5_33-5_44
日本において抑制は長い間タブー視されてきた問題であり抑制に関する看護研究はいまだ十分とはいいがたい。 本研究の目的は,抑制に対する看護職の認識を明らかにすることである。 九州の3県にて827名の看護職を対象に抑制に対する認識について質問紙調査を行なった。 その結果,50%の看護職は縛る以外にも言葉や薬剤使用を抑制であると認識している点に特徴があるものの抑制そのものの持つ危険性に対しては十分に認識していない傾向にあった。 抑制に対する看護職の認識には抑制に関する卒後教育の有無,勤務科,抑制廃止の組織的な決定が影響していた。 しかし,病院として抑制の基準は示されていなかった。 58%の看護職は抑制の基準を必要と認識し,医療従事者に対する倫理教育の不足という現状も明らかとなった。
さまざまな種類の縛る以外の抑制が認識されており,病院や施設としての明確な基準の構築は必要不可欠であろう。 管理面のみならず,人権や安全の視点から抑制のもたらす危険性ならびに抑制を用いるときの適切な方法,抑制に代わる具体策やその効果の研究という教育面が重要な課題と思われる。