2011 年 34 巻 1 号 p. 1_107-1_115
本研究の目的は,溺水による低酸素性脳症となった児の母親の入院から現在までの闘病過程とその心理的プロセスを明らかにすることである。本研究に同意を得た溺水による低酸素性脳症児の母親4名を対象に半構成的インタビューを実施した。インタビュー内容は,児の出来事から現在の生活までの母親の児に対する思いという視点から質的に分析した。その結果,母親の心理として【突然の出来事による混沌とした状況】 【病状回復への願望】 【自分しか守ってあげられない】 【児とともに過ごす生活への葛藤】 【生活の再構築の可能性にかける】 【自責の念】の6つのカテゴリーが抽出された。このことから,看護者は,母親に対して児の病状回復への願望をもち続けている思いを尊重しながら関わり,出来事のしこりを持ち続けている母親の心理サポートを充実させていく必要があると考えられた。