日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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学会受賞講演
サルコイドーシスの呼吸器病変と予後に関連する合併症についての総括的検討:疾患感受性,肺高血圧,気道病変
半田 知宏
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2014 年 34 巻 Suppl1 号 p. 25

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抄録

 受賞の契機となった研究を,3点に絞って紹介する.1)遺伝子多型に関する研究:サルコイドーシス(サ症)の病態には,マクロファージによる抗原提示とT細胞の活性化が関与すると考えられている.ナイーブT細胞の活性化には共刺激分子の発現が不可欠であり,その代表的なものが抗原提示細胞に発現するCD80,CD86と,T細胞に発現するCD28,および抑制性に働くCytotoxic Tlymphocyte antigen︲4(CTLA︲4)である.また,CD24,CD40もCD28とは独立した経路でT細胞の活性化に関わる.これらの遺伝子の既知の一塩基多型(single nucleotide polymorphisms; SNPs)について,ケースコントロール関連分析を行い,CTLA-4,CD80,CD86,CD24,CD40のSNPsがサ症の発症には関与しない事,CTLA-4およびCD40のSNPsが気管支肺胞洗浄液のリンパ球プロファイルに関連する事を示した.また,Interferon regulatory factor 5(IRF 5)の4つのSNPについても検討を行い,そのハプロタイプの一つがサ症の疾患感受性に関与する事を示した.2)気流制限に関する研究:サ症では,拘束性肺機能障害に加えて閉塞性障害が見られることが知られているが,その危険因子や疫学は十分に明らかとなっていない.228例のサ症で肺機能検査,可逆性試験,胸部HRCTを施行し,8.8%の症例で気流制限が認められること,高齢,喫煙,stageⅣ,胸部HRCTでの気管支血管束の肥厚像が気流制限の危険因子であることを示した.また,オリジナル解析ソフトを用いてサ症43例の気管面積と気管支壁面積の測定,および肺野のヒストグラム解析を行い,気管面積と肺野濃度の指標が気流閉塞と関連することを示した.3)肺高血圧症に関する研究:連続246例のサ症を対象にドップラー心臓超音波で肺高血圧症の評価を行った.その結果,5.7%の症例で肺高血圧症が認められ,Total Lung Capacityの低下が独立した危険因子であった.また,29例の心臓病変,21例の肺高血圧症例を含む150例のサ症で血清NT︲proBNPを測定し,血清NT︲proBNPが心臓病変の検出において有用性が高い一方で,肺高血圧症の診断精度は低いことを示した.さらに,サ症に特異的な質問表であるSarcoidosis Health Questionnaire(SHQ)の日本語版を作成し,その妥当性を検証すると同時に,肺高血圧症がサ症の健康関連QOLに寄与することを示した.これらの研究を通じて,サ症の病態における共刺激分子の関与,肺高血圧症や気流閉塞といった臨床管理上問題となる併存症の疫学や病態を明らかにした.

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© 2014 日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会
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