2020 年 26 巻 1 号 p. 1-7
WHOが2017年に提唱した「口腔潜在的悪性疾患(oral potentially malignant disorders;OPMDs)」は,従来あった「前癌病変」と「前癌状態」を包含した概念であり,「臨床的に明確な前駆病変であるか正常粘膜であるかにかかわらず,口腔における癌の発生リスクを有する臨床的状態」と定義されている。
OPMDsには,紅板症や白板症を含む12の疾患がリストアップされている。この中には,本邦においても相当数の発症がみられ,かつ口腔癌の重要な前駆病変として広く認知されているものもあれば,本邦においてはほとんどみられない疾患および状態,またはOPMDsに入れることに議論の余地がある疾患も含まれる。
本稿では,本邦の臨床,研究,および教育の場においてOPMDsの概念がいかに導入され運用されていくのが望ましいかを,文献的に考察して論じる。