日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
報 告
多系統萎縮症に対する鍼治療の一症例
池藤 仁美坂口 俊二
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キーワード: 多系統萎縮症, 鍼治療
ジャーナル オープンアクセス

2014 年 39 巻 2 号 p. 59-63

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抄録
【目的】多系統萎縮症とはオリーブ・橋・小脳の萎縮による進行性の疾患で、筋肉が硬直し、運動障害、 協調運動の喪失等をもたらす障害である。今回、本症に対して鍼治療が奏効した症例を報告する。
【症例】68 歳、女性。主訴:歩行障害。書字障害。呂律が回らない。現病歴:X-1 年4 月より、卵焼 きを作る際、かき混ぜられない、ひっくり返せないなどの症状が出現した。歩行障害も出現したため、 X-1 年9 月に某大学病院を受診し、多系統萎縮症と診断された。MRI・MRA で小脳の血流不全が認め られた。X-1 年3 月、X 年4 月に階段から転倒。X 年5 月にX 線でC1-C2 間の狭小化を指摘された。 X 年6 月に本学附属診療所の神経内科を受診した。患者本人の希望もあり、鍼灸治療を紹介された。〔主 観的所見〕歩行は、右下肢の動作不全と足が違う方向に跳ねるなどの異常運動が現れるため、独歩が 難しく介助が必要である。書字は、楷書なら可能だが、手に力が入る。跳ねるなどの異常運動は無い。 発話は爆発声があり、呂律が回らない。〔客観的所見〕右片足立ち不可。右下腿前面部の筋緊張があり、 右足関節部に固縮がみられる。右手関節部には固縮はみられないが、指伸筋の緊張がやや強い。
【鍼治療】初回から5 回、脳戸を中心とした八卦鍼(頭皮鍼)、ならびに筋緊張のみられた前脛骨筋に 1 Hz で15 分間の低周波鍼通電を行った。効果は、施術後翌日までは改善するが2 日目には戻ってし まうため、6 診以降は低周波をテクトロンEMS2H(テクノリンク社製)での広帯域多重複合波鍼通 電に変更し継続治療を行った。
【結果】治療は週1 回の間隔で行い、8 診以降は効果が1 週間程度持続するようになった。13 診以降 は独歩が可能となり、爆発声は28 診以降に減少した。
【結語】多系統萎縮症の歩行障害や構音障害に対し、標準治療と併用した、頭皮鍼療法ならびに筋緊 張部の広帯域多重複合波鍼通電療法は有効である可能性が示唆された。
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© 2014 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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