日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原 著
脈拍リズムを用いた徒手による圧迫法が足趾皮膚温度に及ぼす影響
―下腿後面への施術による検討―
茂手木 幸彦河上 周一郎岡部 真佐子本田 史子濱田 淳和田 恒彦宮本 俊和徳竹 忠司
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キーワード: 脈拍, 手技療法, 末梢循環
ジャーナル オープンアクセス

2015 年 40 巻 2 号 p. 67-72

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抄録

【目的】下腿への圧迫手技が、末梢循環に及ぼす影響について検討した研究は、これまで多数報告されている。しかし、血流動態への影響を評価する上で、「脈拍」に着目した研究は皆無である。そこで我々は下腿後面の動脈拍動を拡張期と収縮期の2期に分類し、脈拍と手技による介入刺激のタイミングの違いにより、末梢循環血流量にどのような影響を及ぼすかを検討した。
【方法】研究対象は健康成人とし、デザインは同一参加者による2実験間比較試験とした。実験は下腿後面の動脈拍動を拡張期と収縮期の2期に分類し、実験参加者 17 名(男女比 12 対5、平均年齢 30.2 ± 6.5 歳)にそれぞれの時期に下腿後面への両手根圧迫を行うものとした。評価は下肢末梢の温度変化から得られた情報をもとに両実験による介入前後の皮膚温度差で行い、統計処理は正規性検定及び t 検定を用いた有意差検定を行った。また本研究は、筑波大学人間系東京地区研究倫理委員会の承認を得て行ったものである(東 25-70)。
【結果】拡張期圧迫実験、収縮期圧迫実験それぞれの介入前後差比較を行ったが、有意な差は認められなかった。しかし、自律神経反射の有無を確認するために計測した反対側皮膚温度では、拡張期実験では 17 人中 15 人に上昇が見られ(88.2%)、収縮期実験では 17 人中7人(41.2%)に上昇が見られたことから、拡張期での圧迫の方が、反対側皮膚温度に影響を与えやすいことがわかった。また、介入側足趾皮膚温度の下降を示したケースは、拡張期圧迫実験では 17 人中6人(35.3%)、収縮期圧迫実験では 17 人中5人(29.4%)となった。拡張期で下降を示した6人のうち5人が、介入前測定で 33.0°Cを上回っており、残り1人も 31.8°Cであった。収縮期で下降を示した5人のうち、2人は 34.0°C以上、ほか3人は 31.5°C以上と高値を示していた。
【考察】今回の結果は、拡張期での圧迫が、より反対側皮膚温度に影響を与えやすいというものであった。これは、局所血管容積非増大時の方が、自律神経反射を含む、なんらかの反射機序を呈しやすい可能性を示唆したものだと考えられる。また、両実験とも介入前足趾皮膚温度が 31.5°C未満だった参加者ではすべて上昇が見られたことから、介入前皮膚温度に一定の基準を設け、基準以上と基準以下の群で比較した場合、基準以下から開始する下腿後面への圧迫刺激が足趾皮膚温度を有意に上昇させる可能性は非常に高いと考えられる。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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