日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
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鍼灸マッサージ施術記録の他職種共有の必要性
―総合クリニック内電子カルテの利用状況と個人施術所における電子カルテ導入について―
長谷川 尚哉
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 40 巻 2 号 p. 93-99

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抄録

【目的】同一施術者が同時期にクリニック内統合医療療法科(あはき施術室)と個人施術所にて行った施術記録を対象とし、電子カルテの機能比較、および患者属性、愁訴、併用薬品情報、施術転帰などを集計し、統合医療療法科と個人施術所の差異を明らかにし、また施術者の情報収集における問題点を明らかにすることを目的とする。
【方法】対象は統合医療療法科の患者65例の電子カルテ、および、同時期に筆者施術所を初診受付した52例の電子カルテとした。電子カルテの機能比較と被術者の年齢、性別、愁訴の集計に加え、投薬歴、診断歴、既往歴などを抽出し、集計した。
【結果】患者平均年齢は統合医療療法科が個人施術所のそれより 10 歳程度平均年齢が高かった。紹介元科は整形外科 43.9%、総合診療科 37.9%などであった。要注意感染患者は 1 例、酒精綿感作者2名、I型アレルギー例1名であった。3ヶ月以内の投薬例は「なし」は9%であり、他科において9割が投薬中であった。個人施術所では併用医薬なしが50%であった。施術転帰は統合医療療法科が長期継続傾向を示すのに対し、個人施術所は5診以内軽快が63%であった。
【考察】クリニック内電子カルテは院内の従事者で共有された情報管理システムであり、薬歴、画像情報、および他科診断歴などいつでも必要な情報を得る事が可能である。一方で個人施術所においては主訴に関わる基本的問診のみで施術するケースも多く、情報収集が不足する場合もみられた。これらの結果から、鍼灸マッサージ業においても「医療の情報化」を行う上で、医療記録を注意深く取得することが必要と考えられる。現在の施術所ごとに漫然と非統一な集積が行われている現状から、個人施術所においても保健医療情報分野の標準規格を準拠した電子カルテ等の普及が求められる。
【結論】統合医療療法科における患者の投薬情報、画像所見などはあはき施術に有益な情報源となる。施術者は患者情報を必要十分に確認し、施術にあたることを徹底すべきである。個人施術所においては「厚労省における保健医療情報分野の標準規格」に準拠した電子カルテを導入することが今後求められる。

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© 2015 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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