2022 年 55 巻 1 号 p. 19-29
青森県では近年のスルメイカの不漁を受け,マサバおよびアイナメの缶詰ならびにマイワシのレトルト食品の開発に取り組んでいる。そこで,本研究では缶詰(マサバ,アイナメ)およびレトルト食品(マイワシ)の製造工程において種々の要因が ω3脂肪酸(EPA,DHA)の残存率に及ぼす影響を,直交表を用いた実験計画による分散分析法により解析した。実験計画ではそれぞれ4項目(缶詰:魚種,加熱温度,加熱時間,調味液;レトルト食品:容器,調味液,保存期間,加熱温度)を直交表の要因として設定した。その結果,缶詰では重量変化率が魚種,脂質残存率が魚種と調味液,EPA残存率およびDHA残存率が魚種と加熱時間に影響を受けた。一方,レトルト食品では重量変化率が容器,EPA残存率が調味液に影響を受けた。以上より,水産加工食品の製造工程において可食部に ω3脂肪酸を保持するには,缶詰では魚種および加熱時間,レトルト食品では調味液が重要な制御要因であることが明らかになった。