日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
シンポジウム 「鍼通電療法の新たなる展望」
病期・病態による顔面神経麻痺の鍼通電療法
-顔面神経及び表情筋に対する非同期鍼通電療法-
山口 智
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2016 年 41 巻 2 号 p. 35-42

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抄録

本学における東洋医学部門の経緯は、1984年に第二内科の一部門として開設され、以来30年間にわたり医科大学において鍼灸医療の診療や研究・教育に従事してきた。特に学内の専門診療科と共同で診療や研究を推進し、伝統医療の科学化に着手している。  当科外来に他の診療科より依頼があった患者の頻度は、66.1%と来院患者の3分の2以上を占め、診療各科との連携が年々充実してきている。依頼診療科は、末梢性の顔面神経麻痺を専門とする神経内科や神経耳科が上位にランクされている。こうした依頼患者の疾患別出現頻度は、Bell麻痺が最も多く、次いで緊張型頭痛、肩こり症、非特異的腰痛、脳血管障害、Ramsay Hunt症候群等が高い。  末梢性顔面神経麻痺の原因は、Bell麻痺とRamsay Hunt症候群がその大半を占め、その他外傷や腫瘍、全身性疾患等である。評価法には、40点法(柳原法)やHouse-Brackmann法が広く専門医に活用されており、また、予後判定には電気生理学的検査であるENoGが最も重要視されている。 当科における鍼灸治療の方法は、多くの臨床研究の成果より病期や病態(麻痺の程度)によりそれぞれ治療法を選択している。発症早期は顔面神経を目標とした経穴に置鍼している。麻痺発症後2週間で麻痺の程度が軽度であれば顔面神経を目標とした鍼通電療法(1Hz, 10~15分)、麻痺の程度が重度であれば表情筋を目標とした置鍼、及び非同期鍼通電療法を実施している。さらに、後遺症の予防や治療に対しても非同期鍼通電療法を早期に開始している。 このように、専門診療科と連携し早期に鍼治療を開始することで麻痺の改善を早め、また、現代医療でも難治とされている完全麻痺や後遺症に対しても概ね期待すべき効果が得られている。一方、顔面神経を目標とした鍼通電刺激が予後判定に有用な手段となる可能性も示唆された。

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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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