日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原 著
視覚障害者を対象とした刺鍼技術に対する反復練習の効果
宮地 裕久和田 恒彦緒方 昭広柿澤 敏文宮本 俊和
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キーワード: , 視覚障害, 反復練習
ジャーナル オープンアクセス

2017 年 42 巻 2 号 p. 73-79

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抄録

【目的】鍼における目標深度への円滑な刺鍼を課題として、視覚障害の程度に関わらず効果をあげ られる反復練習の方法について検討した。
【方法】はり師をめざす視覚障害学生を対象にした。対象者には、2週間にわたって刺鍼練習台を 用いた1日1本以上の目標深度15㎜への刺鍼練習を課し、練習では、視覚障害があっても自身で 深度を確認できるように、5㎜間隔の階段状目安駒を活用させた。練習前後の刺鍼操作により刺鍼 深度と刺鍼時間の測定と刺鍼動作の観察を行い、全盲群と弱視群を比較した。刺鍼練習台への15 ㎜刺鍼は3回実施し、15㎜に対する絶対誤差の平均値と、各回の刺鍼時間の合計値を算出した上 で比較した。またヒト前腕部への15㎜刺鍼は1回実施し、15㎜に対する絶対誤差と刺鍼時間を求 めた上で比較した。
【結果及び考察】対象者は20名、うち全盲または光覚8名(以下、 「全盲群」 )、弱視12名(以下、 「弱 視群」)だった。測定時ごとの結果について全盲群と弱視群を比較すると、練習後の刺鍼練習台へ の15㎜刺鍼のみ弱視群は全盲群より有意に短時間で刺鍼した。練習効果について、刺鍼練習台や ヒトへの15㎜刺鍼では全盲群、弱視群とも練習前に対して練習後は有意な絶対誤差の減少を示し たが、刺鍼時間では弱視群のみ有意な短縮を示した。対象者は刺鍼ごとに触覚で深度を確認でき る目安駒を用いたことで、練習直後に結果のフィードバックを得られ、自身で評価しながら効果 的な反復練習を行うことができたと考えられる。一方で、練習後の刺鍼で練習前より時間を要し た対象者が全盲群に2名みられ、刺手の持ち替え回数の多さと、深度確認に多くの時間を費やし ていることを確認できた。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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