日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原 著
腰部脊柱管狭窄症に対する鍼治療の効果
- JOABPEQ を用いた検討 -
小林 信満山口 智高橋 啓介
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2017 年 42 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

【目的】腰部脊柱管狭窄症(LSS)に対する評価法として、日本整形外科学会腰痛評価質問票 (JOABPEQ)等が整形外科領域で広く活用されているが、LSSに対する鍼治療効果をJOABPEQで 評価したものはほとんど見当たらない。そこで今回、西洋医学的治療で期待すべき効果が得られ なかった難治性で慢性のLSSに対する鍼治療効果を、JOABPEQを用いて検討した。
【方法】研究デザインは過去起点コホート研究、非盲検前後比較試験、セッティングは本学2施設 とした。対象は2012年1月~2016年11月に当科を受診したLSS患者でJOABPEQを実施できた 者とした。選択基準は他院・本院整形外科でLSSの診断を受け、西洋医学的治療で期待すべき効 果が認められなかった者、罹病期間3カ月以上、除外基準はJOABPEQの回答が十分でない者、鍼 治療中に他の治療が追加された者とした。鍼治療は1カ月間、週に1~2回の間隔で個々の病態 に応じて実施した。評価方法はJOABPEQで初回治療前と1カ月後の治療前に評価した。
【結果】抽出された患者は9例(男性3例、女性6例)、年齢68.9±7.1歳(mean±S.D.) 、内訳 は神経根型5例、馬尾型2例、混合型2例であった。VASの変化は、腰痛では有意な変化は認め られなかったが、殿部・下肢痛としびれではそれぞれ改善傾向であった(P<0.1)。JOABPEQは疼 痛関連障害と歩行機能障害で一部向上した。
【考察・結語】鍼治療により、殿部・下肢痛、しびれは概ね期待すべき効果が得られたが、QOLは 疼痛関連障害と歩行機能障害で一部向上がみられ、大半が維持されていた。このことは今回対象 となった症例が西洋医学的な治療で期待すべき効果が得られない難治性で慢性のため、このよう な成績が得られたものと考える。さらに治療期間が1カ月間と短期間であったため、疼痛やしび れは軽減したが、QOLは維持された状態であった。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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