日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
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ヘルスキーパーによる鍼・手技療法が労働者の疲労に及ぼす影響
- 「自覚症しらべ」による検討 -
須藤 充昭和田 恒彦
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2017 年 42 巻 2 号 p. 97-102

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抄録

【目的】大企業を中心に視覚障害鍼灸マッサージ師をヘルスキーパーとして雇用するケースが増え てきているが、ヘルスキーパー導入の有用性について検討した報告は少ない。本研究は、大手出 版社子会社である株式会社九段パルス(ヘルスキーパーを専業で行う組織)の来院者(親会社お よび関係会社従業員)の鍼・手技療法の効果・有用性を労働疲労の指標である「自覚症しらべ」 を用いて検討した。
【方法】25名(男性18名、女性7名)平均年齢は48.8±10.5 歳を対象に日本産業衛生学会産業疲 労研究会の「自覚症しらべ」(25項目、5群、5段階評価)を用いて、通常行っている40分の施術 (鍼・マッサージ)の前後に記入を依頼し、集計後、比較検討した。
【結果】施術前には、「肩がこる」3.92±0.98、「目がつかれる」3.40±1.17、「腰がいたい」3.52 ±1.02の項目で平均3.40以上の相対的に高い値だった。施術の前後の比較では、 「頭がおもい」 「い らいらする」 「おちつかない気分だ」 「目がいたい」 「肩がこる」 「ねむい」 「やる気がとぼしい」 「不 安な感じがする」「ものがぼやける」「全身がだるい」「ゆううつな気分だ」「腕がだるい」「横にな りたい」「目がつかれる」「腰がいたい」「足がだるい」の16項目は有意に改善された。 (P<0.05)
【考察】VDT作業や校正作業などに従事する従業員が多いためか、 「肩がこる」、「目がつかれる」 などの症状が強く、また施術の効果も高いことがわかった。また、だるさ感、ぼやけ感、ねむけ 感などの改善率が高いことは、鍼灸マッサージが従業員の疲労を回復させ、作業能率を向上させ る可能性を示唆した。
【結語】「自覚症しらべ」による検討から、ヘルスキーパーによる鍼・手技療法が労働者の疲労回 復に効果があり、産業衛生分野で貢献しうることがわかった。

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© 2017 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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