日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
シンポジウム 「腰痛に対する治療の実際」
腰痛に対する理学療法的評価・アプローチの考え方と実際
山口 正貴
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 43 巻 2 号 p. 45-52

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抄録


 国民生活基礎調査によると、腰痛は有訴者率1 位という状況が10 年以上も続いており、腰痛保 有者は約2800 万人とも言われている。この原因の一つには、約85%は原因不明で特異的な身体所 見に乏しく、画像所見と必ずしも一致しない非特異的腰痛であることが考えられる。しかし、そ の疼痛源は、椎間板や椎体、椎間関節、靭帯、筋・筋膜など複数の脊椎構成要素に存在すると考 えられている。近年では心理社会的要因の関与も示唆されており、より複雑化している。このよ うに非特異的腰痛患者は要因が多様なため、有効な治療法の確立が難しく慢性化している患者が 少なくない。そこで、筆者らは理学療法士の視点から有効な治療法の確立を目指し研究を進めて いる。本稿では、筆者らが行っている研究の一部を紹介する。
 6 か月以上持続している慢性の非特異的腰痛患者に対する4 種のストレッチングの介入効果を、 初回評価におけるdirectional preference(DP)の有無で比較した。
 初回評価でDP を認めた症例41 名、DP を認めなかった症例32 名に分類し、週1 回の介入と4 週間のセルフエクササイズを指導した。介入前後でVAS、ROM、SF-36、JOABPEQ、ODI を評価した。
 その結果、いずれの項目も群間には有意差を認めず、2 群とも介入前後で疼痛・身体機能・精神 機能すべての項目で有意な改善を認めた。
 以上のことから、本ストレッチングはDP の有無に関わらず、慢性の非特異的腰痛患者全般に有 効である可能性が示唆された。

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© 2018 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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