日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
シンポジウム 「腰痛に対する治療の実際」
マッサージにより呼吸をコントロールすることによる 痛みへの影響についての理論と実際
内田 真弘
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ジャーナル オープンアクセス

2018 年 43 巻 2 号 p. 37-43

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抄録

 非特異性腰痛。構造的には特に問題なく発症起点もわからない。そして痛みも常時感じるわけ ではなく痛みを強く感じる時もあれば、さほど気にならないときもある。これを「ただの気のせ いですね」としてしまうのは「質量のある物質」に全ての原因を求める時にありがちな発言と言 えるのではないでしょうか?その逆に構造的に異常が見られても特に腰痛を訴えないという方も いるという事実。しかし生きている生身の人間とは質量のある物質と質量のないエネルギーから 成るものです。そして痛みとは主観であり、実際にその人の痛みはその人にしか理解できません。 客観的には痛みはないはずなのに痛みを感じたり、客観的には痛みがあるはずなのに痛みを感じ なかったりとするのも人間という動物の特徴であるとも言えます。
 腰痛という病気をどうとらえるか?器質という質量のある物質から考えるのか?それとも気質 という質量のないエネルギーから考えるのか?ただこの器質と気質は相生相克であり、それぞれ が単独で存在するものではありません。
 腰痛には他人に感染する腰痛と感染しない腰痛があるのです。そこには「気とは息のことである」 ということを大脳新皮質の前頭葉で理解するのではなく腑に落とすことにより、感染する腰痛こ そ、我々東洋医学を生業とするものの関わる腰痛と言えます。
 気が合わない人、息が合わない人と一緒にいることは自律神経が乱れやすくなり、そこから免 疫システムに不具合が生じることは誰にでも経験があることではないでしょうか?  それは機嫌が悪い人の横にいれば普通の心理状態の人ならば精神的、肉体的に不快感を覚える というのは理屈ではなく空気を感じ取る本能ともいえる低次レベルでの自己防衛システムがなす 業でもあるのです。
 東洋医学では気の巡りを改善することにより自己治癒力を高めることで様々な病気を治癒させ る医学と言えます。その気、つまりは息を整えるためにマッサージを用いるのです。
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© 2018 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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