抄録
【はじめに】虚弱高齢者の増加に伴い、国の介護予防支援事業の施策が進められ、介護予防・日常
生活支援総合事業(以下、総合事業)の展開が期待されている。あん摩マッサージ指圧・はり・きゅ
う(以下、あはき)施術所における高齢者の介護予防支援に対する取り組みについては把握され
ていない。そこで介護予防支援事業を発展させるための基礎資料を資するため、総合事業の実態
や取り組みに対する意識に着目して調査を行った。
【方法】公益社団法人全日本鍼灸マッサージ師会の協力により、あはき施術所に対して無記名自記
式によるアンケート調査を実施した。主な調査項目は、施術所の事業状況、総合事業等に関する
理解と意識とした。回答が得られた568 件について単純集計を行った。各項目の結果は、計数ま
たは割合(%)で示した。また総合事業の実施の有無による施術所の特徴についてクロス集計お
よび統計分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】あはき施術所以外に運営している事業は、通所介護42 件(7%)が最も多く、次いで居宅
介護支援事業所27 件(5%)、総合事業16 件(3%)であった。総合事業の実施している施術所は、
実施していない事業所と比較して、有資格者数が0.5 人、高齢者の利用が2 割程多かった。77%が
介護予防支援の取り組みの必要性を感じていたが、総合事業に関する興味は、必要性よりも低かっ
た。
【考察】総合事業を運営している施術所が少ないため、具体的な事例も少ない。介護予防支援の取
り組みの必要性を感じてはいるが、実態が把握できない状況では、興味が高まらなかったと考える。
今後、総合事業を運営している施術所の好事例報告が増えることにより、総合事業の運営に対し
て興味が高まることが期待される。
【結語】あはき施術所における高齢者の介護予防支援に対する取り組みの実態や意識について把握
し、事業の発展に必要な基礎資料を得ることができた。