抄録
【目的】あん摩やマッサージは、スポーツ選手の運動後の疲労回復などに有効であることが示され
ている。一方で、運動直前のマッサージは、最大筋出力の減少や、走行パフォーマンスに必ずし
も好影響を与えないことが報告されている。本研究では、あん摩施術が動的バランス能力に与え
る影響について検討した。
【方法】対象は、大学男性サッカー選手24 人。選手24 人をあん摩施術群とコントロール群にラン
ダムに割り付け、動的バランス能力について介入後の変化を観察した。Setting: 大学附属医療セン
ター内研究室。アウトカム:重心動揺計(アニマ社製 GS-10 type C)を用いて、姿勢安定度評価
指標(index of postural stability:以下、IPS)を介入前、介入直後、介入10 分後に測定した。測定
は、開眼で検査台を硬面にした条件(IPS)と、閉眼で検査台を軟面にした条件(Modified IPS; 以
下、MIPS)で行った。直立姿勢および、身体を前方・後方・右方・左方に傾けた姿勢での重心動
揺を測定した。分析方法:IPS を「log〔(安定性限界面積 + 重心動揺面積)/ 重心動揺面積〕」とし
て算出した。安定性限界面積は「前後の重心移動距離×左右の重心移動距離」の矩形面積として
算出した。重心動揺面積は、「前方・後方・右方・左方・中央の 5 条件下の平均値」として算出した。
介入:腰部および両下肢の軟部組織に対するあん摩施術を10 分間実施した。統計処理は、ANOVA
を用い、有意水準は5%とした。
【結果】IPS およびMIPS は群内および群間で有意差はみられなかった(P > 0.05 )。
【考察・結語】ハイパフォーマンスなスポーツでは、運動中に生じる身体重心や支持基底面の変動
に対して適切に姿勢を制御する動的バランス能力が高い精度で必要となる。運動前の腰下肢への
10 分間のあん摩施術は、重心動揺計を用いた姿勢安定度評価指標(IPS、MIPS)による動的バラ
ンス能力に影響を及ぼさない。