日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
第44回学術大会 特別講演
変形性膝関節症の病態と治療
- 新たな治療への期待も含め -
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 44 巻 2 号 p. 1-7

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抄録


 人体最大の蝶番関節である膝関節の安定性には、前・後十字靭帯と内・外側側副靭帯、さらに 線維軟骨である半月板が寄与している。変形性膝関節症は半月板の変性・断裂および関節外への 脱臼を機に発症し、引き続き生じる軟骨の摩耗・消失、さらに軟骨下骨の硬化や局所的な骨折、 辺縁の骨棘の形成により病期が進行する。荷重関節である膝関節の疼痛を伴う変形の進行は、高 齢者の生活の質(QOL)を著しく低下させる可能性がある。
 変形性膝関節症は罹患率の高い疾患でもあり、この疾患による高齢者の日常生活動作(ADL) の低下は社会全体に対しても多大な影響を及ぼす。医療従事者が、より良い解決策を見出すべき 重大な課題であり、保存的治療によって、疼痛を制御するのみでなく、病期の進行を防止するこ とが求められる。近年、注目されている多血小板血漿(PRP)療法や、幹細胞移植は疼痛の除去と 同時に機能回復、さらに軟骨の再生の可能性についても期待されているが、観血的な治療介入ま でのtime saving として十分な効果があるか否かは明らかではない。
 人工膝関節置換術の普及は変形性膝関節症治療のbreak through であったといえる。患者のADL は著しく回復する優れた治療法であるが、それでもなお、正常な膝の機能には及ばず、再手術の 危険性も孕んでいる。
 変形性膝関節症の程度は個人差があり、発症要因をさらに詳細に検討することも必要であるが、 発症後は、①的確に病期の進行を防止すること、②患者の求めるADL を鑑みて保存的治療の限界 を受け入れること、③観血的治療においては、年齢や病期を考慮し最適な方法を選択する必要が ある。

© 2019 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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