日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
報 告
ツイートの分析からみた 鍼施術による長胸神経麻痺に関する報道の影響
福島 正也
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2019 年 44 巻 2 号 p. 73-77

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抄録

【緒言】2017 年9 月10 日から11 日にかけて、プロ野球投手が鍼治療のミスにより長胸神経麻痺に なった可能性があり、球団側が投手に謝罪したとの報道があった。この報道は、鍼治療と長胸神 経麻痺の因果関係が明らかにされないままに行われており、鍼治療のイメージに対する悪影響が 懸念される。Twitter は代表的なソーシャル・ネットワーキング・サービスで、そのコンテンツで あるツイートの分析は、社会心理学における感情反応の調査等に応用されている。本研究は、ツイー トの分析により、報道内容が鍼治療のイメージに与えた影響を調査することを目的に実施した。
【方法】調査は2017 年12 月に実施した。調査対象は、報道日と、その前後1 週間時点および前後 1 ヶ月時点のツイートとした。検索方法は、“鍼”or“針治療”or“はり治療”or“はりきゅう”or “針灸”を検索語とする掛け合わせ検索とし、日本語でのツイートを抽出した。抽出されたツイー トは、ツイート数の比較、およびKH Coder(Ver. 2.00f)を用いたテキストマイニングによる、頻 出語、コロケーション統計(“鍼”のコンコーダンス検索)、報道日の共起ネットワークの分析を行っ た。
【主な結果】報道日のツイートは、ツイート数が約4.4 倍に増加し、報道内容と関連した語が多く 抽出され、“怖い”“ 酷い”という語が共起していた。
【考察】調査結果から、報道内容は、一定の注目を集め、相応の社会的インパクトをもつものだっ たと考える。また、報道内容にネガティブな感情を抱いた者が多かったことが示唆された。本調 査結果は、報道内容に対する短期的な感情が反映された可能性が高いと考える。今後、報道の長 期的な影響の調査や、高度情報社会に対応した鍼治療のイメージブランディングが求められる。

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© 2019 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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