日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
報 告
鍼施術による腰痛症状と自律神経活動の 変化と関連についての検討
古田 高征
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キーワード: 鍼施術, 腰痛, 心拍数, 血圧, 圧脈波
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2019 年 44 巻 2 号 p. 85-90

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抄録

【目的】慢性の腰痛を持つ被検者に鍼施術を行い、施術前後の腰痛症状の変化と自律神経活動の関 連性を検討したので報告する。
【方法】研究は、実験についてインフォームドコンセントを行い、同意が得られ慢性的な腰痛を持 つ成人男子11 名を対象に行った。実験は、施術前後に腰痛をVAS 値、自律神経活動を心拍数・心 拍変動係数・血圧にて測定した。さらに指先から圧脈波を導出し、実験開始から終了まで記録した。 圧脈波は積分処理し測定値とした。また施術前後の波形から心拍変動の周波数解析を行い、LF成分、 HF 成分、LF/HF 値を求めた。鍼施術は、ディスポ鍼20 号40㎜を使用し、被験者を腹臥位として肝兪、 脾兪、腎兪、大腸兪、殿点の左右10 ヶ所に単刺術にて2㎝刺入を行った。
【結果】鍼施術により腰痛VAS 値は、施術前58.1 ± 20.1 から施術後32.0 ± 20.0 に有意な低下がみ られた。心拍数は、施術前71.4 ± 7.7 拍/ 分から施術後69.1 ± 7.8 拍/ 分、心拍変動係数は施術前4.77 ± 1.18 から施術後5.21 ± 1.79 と有意差がみられた。施術前後の腰痛VAS 値と自律神経活動の指 標の相関を比較すると、心拍変動のHF 成分、圧脈波積分値において有意な負の相関関係がうかが われた。
【考察】一般に鍼灸施術は副交感神経活動を高め、自然治癒力を高めると言われる。今回、症状が 軽減されるほど、心拍変動のHF 成分や圧脈波積分値の増大傾向がみられた。したがって、副交感 神経活動の増大が症状の軽減に関与していると思われ、これらの指標を確認しながら施術をする ことで、より適切な刺激量で施術を行えることが示唆された。
【結語】慢性の腰痛を持つ被検者に鍼施術を行い、①施術前後の腰痛VAS 値は有意に低下した。② 腰痛VAS と心拍変動のHF 成分、および圧脈波に有意な相関がみられた。

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© 2019 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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