日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原著
キルギスにおける鍼療法の教育と施術実態に関する調査
― キルギスで視覚障害者が鍼療法を行える可能性について ―
Dzhorobekova Shirinoi近藤 宏
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2020 年 45 巻 2 号 p. 13-19

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抄録
【目的】キルギス共和国の鍼療法の教育や医療機関での実態について訪問面接調査を通して明らか にするとともに、視覚障害者がキルギスにおいて鍼療法を行える可能性について検討した。
【方法】調査対象者は、キルギス共和国のビシュケク市内の医療機関で鍼療法を実施している医師 10 人(男性 4 人、女性 6 人、年齢 49.7 ± 10.3 歳、医師経験年数 24.4 ± 10.8 年)とした。対象者 は機縁法により募集した。インタビューは、構造化面接とした。聴取内容は、基本属性、鍼療法 に関する質問(研修内容や現在の業務内容、業務上の課題、および日本の鍼灸療法の認知、視覚 障害者が鍼療法を行うことに対する意識)とした。聴取内容はデータ化し、構造化された質問項 目のうち数値で回答する項目については、単純集計を行った。また、キルギスで視覚障害者が鍼 療法を行うことに関する意識について、テキストマイニングの手法により分析を行った。
【結果】鍼療法の研修施設は、キルギス国立医療資格認定更新専門大学(70%)が最も多かった。 研修期間は、5.2 ± 3.9 ヶ月、鍼療法経験年数は、14.1 ± 9.4 年であった。専門診療科は神経科(30%) が最も多かった。1 日あたりの鍼患者数は、9.6 ± 6.6 人であった。診療に鍼療法を併用している 医師と、鍼療法を専門としている医師の割合は 50%であった。キルギスで視覚障害者が鍼療法を 行うことについては、クラスター分析から「患者を東洋医学により正しく診断することは医師で あっても難しい」、「視覚障害者は目が見えなくても、触覚や嗅覚などの感覚器官が鋭いため、勉 強すれば鍼治療が可能だと思う」と解釈できた。
【考察・結語】キルギス共和国の医療機関で鍼療法を行っている医師を対象に鍼療法の教育や鍼療 法の状況に関するインタービューを行い、その実態の一端と、視覚障害者が鍼療法を行うことへ の意識を明らかにすることできた。
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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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