日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
報告
乳房切除後疼痛症候群に鍼治療が有効であった 1 症例
松浦 知史山口 智高橋 孝郎
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2020 年 45 巻 2 号 p. 77-82

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抄録
【目的】乳癌術後患者において術後 10 年を経過しても約 20% の患者に疼痛が認められ、QOL を低 下させる。今回、乳房切除後疼痛症候群(PMPS)と肩関節可動域(肩 ROM)制限を認める患者 に対して鍼治療を実施したところ良好な結果が得られたので報告する。
【症例】61 歳女性、主訴:左前胸部・腋窩~上腕にかけての痛み、左肩 ROM 制限。現病歴:X - 8 年に本学乳腺腫瘍科にて左乳癌と診断され、手術を施行。術後は疼痛や肩 ROM 制限は認められ なかったが、X 年 1 月頃から上記症状出現。同院で精査を実施したが異常なし。内服加療にて症状 は不変。X 年 7 月、当科紹介受診。初診時より痛みに対する不安感が顕著。初診時所見:肩 ROM(左): 屈曲 90°、外転 100°、外旋 40°、内旋 70°。広背筋、大円筋の筋緊張亢進と腋窩部及び上腕にかけ て圧痛あり。病態は PMPS 及び破局的思考の疑い。期間:1 回 / 週、合計 21 回。方法:ステンレ ス鍼(40 ㎜、16 号、セイリン社製)。広背筋、大円筋の筋緊張亢進部位と腋窩部及び上腕の圧痛 点に置鍼 10 分。評価:肩 ROM と Numerical Rating Scale(NRS)は 1 回 / 週、Pain Catastrophizing Scale(PCS)と MOS 36-Item short-From Health Survey(SF-36)は鍼開始時と 1 回 / 月。
【経過】初診時は肩 ROM 制限があり、疼痛を認めた(NRS7)。第 21 診目では肩 ROM は改善(屈 曲 170°、外転 170°、外旋 60°、内旋 80°)し、疼痛も軽減した(NRS4)。筋緊張・圧痛も軽減した。 PCS(点)は初診時 49 → 23 に改善し、SF-36 の得点は上昇した。
【考察・結語】本症例に対して鍼治療を実施した結果、疼痛軽減と肩 ROM の改善が認められ、 PCS が改善し QOL も向上した。PMPS に対する鍼治療は有効である可能性が示唆された。
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© 2020 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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