抄録
【緒言】頸部痛の年間有病率は 30%から 50%とされ、患者の QOL を低下させるだけでなく、患者 個人の経済的負担ひいては医療経済の負担を増加させることが知られている。頸部痛のうち、非 特異的頸部痛は鍼灸臨床において頻繁に遭遇する愁訴であるが、非特異的頸部痛に対する鍼治療 の効果を検討した研究は少ない。したがって、本研究では非特異的頸部痛に対する鍼治療の研究 の現状を明らかにし、研究を遂行する上での課題を探索することを目的としてナラティブレビュー を行った。
【方法】分析対象とする文献の包含基準は、非特異的頸部痛に対して実施された鍼治療の臨床研究 であり、2010 年 1 月 1 日から 2021 年 12 月 1 日までに発表された原著論文とした。文献は医学中 央雑誌 Web 版および PubMed を用いて検索した。
【結果】データベース検索の結果、国内文献は 252 編、海外文献は 752 編の論文が抽出された。そ のうち、包含基準に該当しない論文を除外し、国内文献は 7 編、海外文献は 45 編の論文が収集さ れた。内訳はランダム化比較試験(以下、RCT)が 32 編(うち二重盲検が 5 編、一重盲検が 9 編)、 前後比較試験が 8 編、クロスオーバー試験が 3 編、非ランダム化比較試験が 2 編、N of 1 試験が 1 編であった。また、非特異的頸部痛のうち、疾患を特定していない文献は 9 編、筋筋膜性疼痛を 対象としている研究は 34 編、肩こりを対象とした文献は 7 編、頸椎症が 2 編、頸椎椎間板症およ び頸椎椎間関節症は 0 編であった。
【考察】収集された文献の多くが筋筋膜性疼痛を対象としており、頸椎椎間板症および頸椎椎間関 節症を対象とした文献は抽出できなかった。また、RCT では二重盲検による研究が少なく、鍼の 効果について十分な検証はされていないことが問題である。したがって、将来的に、質の高い二 重盲検の RCT の実施が望まれる。