総合健診
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日本総合健診医学会 第40回大会
日本総合健診医学会 第40回大会・特別講演2
予防医学と栄養・食事
中村 丁次
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ジャーナル オープンアクセス

2012 年 39 巻 6 号 p. 750-758

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抄録
 食べ物と健康や疾病との関係は、世界中で多種多様の方法で論じられながら、栄養学のみが生命科学の一分野として存続できた。その理由は、栄養素という生命の素を発見し、栄養素の生成に関連する成分を食物から分析したからである。栄養学は、食料不足や偏食により発生した多くの栄養失調症の予防、治療に貢献した。わが国は、第二次世界大戦前後、栄養失調症に悩まされたが、集団給食を介した食料の適正な分配と栄養教育により、短期間に問題を解決した。しかし、1980年以降は過剰栄養による肥満、生活習慣病が問題となる一方で、若年女子を中心としたダイエットによる極端なやせや貧血、さらに傷病者や高齢者の低栄養障害が問題となってきた。このような傾向は、世界中でみられ、Double Burden Malnutrition(DBM)と呼ばれている。DBMとは、同じ国に、同じ地域に、同じ家族に、さらに同じ人物に過剰栄養と低栄養が共存している状態をいう。食生活の欧米化や、家庭や地域で習慣的に伝承されてきた伝統的な食習慣が崩壊し、栄養問題は複雑化、個別化してきている。このような問題を解決するために、人間栄養学を基本とした新たな栄養管理の方法が開発され、栄養・食事の改善を目的にした大規模な介入研究が行われ、その有効性と限界性が議論されている。また近年、同じ栄養量でありながら食品の種類、組み合わせ、調理法、食べる時間や速さ、食物の物性、さらに食べる順位などの食べ方が生体へ及ぼす影響の研究も始まった。栄養や食事が疾病を予防する目的を果たすには「何を、どのくらい食べるか」だけではなく、「どのように食べるか」を議論していく必要がある。
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© 2012 一般社団法人 日本総合健診医学会
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