抄録
鍼灸やあん摩・マッサージ・指圧などの手技療法は比較的副作用が少ない治療方法であると言われるが、身体に施術を行う以上は、ある程度の過誤や副作用が発生する危険性を含んでいる。 また、国の内外を問わず、医学系の学術誌には毎年のように何らかの鍼灸に関連した有害事象の報告が掲載されている。その中には、施術との因果関係が低いと考えられるものもあるが、明らかに施術者の過失によると捉えられるものも含まれている。
2020 年 3 月より、(公社)全日本鍼灸学会の臨床情報部安全性委員会が作成した「鍼灸安全対策 ガイドライン 2020 年版」が学会ホームページ上で公開されている。このガイドラインでは、鍼灸 に必要なリスクマネージメントが網羅されているのでご一読いただきたい。
本稿では、ガイドラインの内容に沿って、臨床で遭遇する可能性のある主要な有害事象につい て触れる。比較的報告が多い重篤な有害事象は気胸である。気胸の防止対策としては、胸背部の 局所解剖および危険深度を理解し、不必要な深刺を避けることが重要である。
感染対策では標準予防策の徹底が最も重要である。手指衛生では、手洗いとラビング法のどち らを選択するかということと、手指衛生を実施するタイミングがポイントとなる。また、個人防 護具を使用する場合は、その使用目的を理解し、施術内容に応じて個人防護具を選択することが 重要となる。