抄録
頚椎症に由来する頚部痛の原因はこれまで未解明であったと言って良い。従って、頚部痛を主 訴として受診した中高年の患者において、炎症、外傷、腫瘍といった特異的な疾患が無い限り、 その原因を確信を持って述べられる医師は、脊椎脊髄疾患の専門医を含めても稀であったと思わ れる。確かに、椎間板あるいは椎間関節の変性を原因とする頚部痛があるとの報告がみられる。 しかし、それらの論文を繙けば多くの疑問が生まれる。最大の問題は、椎間板や椎間関節の変性 が万人に例外なく、しかも各椎間板・椎間関節に必発する事実にある。椎間板・椎間関節の変性 由来の頚部痛が確実にあるならば、万人が間断なく痛みを煩う筈である。一方、頚部神経根の圧 迫由来の頚部痛が最近明らかとなった。項・肩甲部痛が左右どちらかの片側にあれば、そしてそ の部位が、項部、肩甲上部、肩甲間部、肩甲骨部の領域のいずれかにあれば、原因が神経根の圧 迫である可能性が甚だ高い。Spurling テストで、痛みが再現あるいは増強されれば、神経根圧迫の 診断を確定でき、患者にその原因を確信を持って説明することができる。