日本東洋医学系物理療法学会誌
Online ISSN : 2434-5644
Print ISSN : 2187-5316
原著
単回使用毫鍼に関する材料学的調査 第 2 報
- 通電負荷による重量・寸法および機械的強度の変化について -
糸井 信人小濱 和之佐藤 義晃松井 敬宏谷口 美保子石井 祐三松本 美由季長谷川 尚哉
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2023 年 48 巻 2 号 p. 103-112

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抄録
【目的】パルス通電(以下パルス)や直流通電(以下 DC)による単回使用毫鍼の重量・寸法および 機械的強度への影響を明らかにし、鍼の安全性と品質に関する情報を提供する。
【方法】50mm 20 号鍼(鍼体長 50mm・鍼体径 0.20mm)のステンレス鍼(試料 A ~ E)と銀鍼(試料 F) を試料とし、パルスは LFP-2000e、DC は AC アダプタ (DC12V-5A/60W) を用いた。負荷条件は実 験環境を用い、通電なし [ 1水浸 ]、パルス [ 2 100Hz、32Hz、4 100Hz1C、5 2Hz1C]、DC[ 6 60 秒、7 10 秒 ] とした。工業的基礎調査法として、負荷前後の鍼の重量と寸法を測定し、変化量の代表値を算出、それらの値を散布図上に示して負荷の影響を評価した。機械的強度測定法として、 負荷前後の鍼の曲げ強度変化を各試料の陽極・陰極ごとに評価した。
【結果】ステンレス鍼では、DC の陽極で重量と鍼体長の減少があったが、パルスではそれらの減少はなかった。一方、ステンレス鍼の DC の陽極で有意な強度低下を示した場合があり、一部の試料で折鍼していた。パルスでは、2Hz1C 群と 100Hz1C 群の陰極で強度低下した場合があったが、 折鍼はなかった。逆に、100Hz 群の陰極では有意に強度上昇した場合があった。
【考察・結語】通電負荷により鍼の重量、寸法、機械的強度に変化が生じる場合があることを明らかにした。この変化は鍼の安全性と品質に影響を及ぼす可能性があり、鍼灸臨床において慎重な 選択と管理が必要であることを示唆している。今後、試験実施数を増やし、通電負荷の影響をより詳細に検討し、鍼の品質向上と安全性確保に寄与する情報を提供していきたい。
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© 2023 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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