日本東洋医学系物理療法学会誌
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スキルアップ講座
末梢神経性顔面神経麻痺後遺症に対する鍼・手技療法
- 顔面拘縮の軽減を目的としたアプローチ -
林 健太朗
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ジャーナル オープンアクセス

2024 年 49 巻 2 号 p. 55-61

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抄録
 末梢性顔面神経麻痺(以下 麻痺)に対する鍼治療は、『顔面神経麻痺診療ガイドライン2023 年版』の中で、後遺症が出現した慢性期においても弱く推奨された。麻痺後遺症は患者のQOL を低下させることから、その予防・軽減を目的に発症後早期からの定期的な介入が重要とされる。鍼治療・手技療法に関しても同様と考えられる。しかし、実地臨床においては後遺症が出現した後に治療を開始する患者も少なくない。したがって、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師は、麻痺後遺症を有する患者に遭遇する可能性があり、そのような患者に対応できるよう基本的な知識を身につけておく必要がある。
 麻痺の主な原因は、Bell 麻痺やRamsay Hunt 症候群であり、自然治癒する患者がいる一方で、不全治癒や後遺症が出現する患者も存在する。後遺症は、麻痺発症後10 日~14 日時点での柳原法10 点以下やElectroneurography 値40% 未満の場合、発症後4 か月頃より生じる可能性がある。代表的な後遺症には、病的共同運動、顔面拘縮があり、安静時および表情形成時の顔面部非対称性や顔面部不快感を生じることがある。これらの後遺症は、患者の日常生活や社会生活を制限し、QOL を低下させる。
 後遺症のひとつである顔面拘縮の代表的な評価方法は、Sunnybrook 法の安静時対称点、日本語版Facial Clinimetric Evaluation Scale の顔面の感覚分野やその程度をVisual Analog Scale で評価する方法があり、これらを組み合わせて定期的に評価する。
 我々が行なっている鍼治療・手技療法は、後遺症、特に顔面拘縮が予想される場合は予防、既に生じている場合は軽減を目的に行う。鍼治療は、表情筋上にある経穴を指標に30 ミリ・12 号のディスポーザブルステンレス鍼を用いた15 分間の置鍼、手技療法は表情筋部を中心に行う。鍼治療・手技療法時には、温熱療法、セルフケアおよび日常生活指導を併用している。治療計画として、治療頻度は、1~2 週に1 回を基本に、発症後12 か月まで継続することが多い。鍼治療・手技療法は、安静時対称性および顔面部不快感の改善により患者のQOL 向上に寄与できると考える。
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© 2024 一般社団法人 日本東洋医学系物理療法学会
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