抄録
【目的】鍼灸、マッサージ等の睡眠障害への影響については一定の効果が認められる一方、指圧の影響や効果の検討を行った研究は現在数少ない。本研究では60 歳以上の高齢者の主観的な睡眠の問題に対して指圧療法の影響の探索的研究を行い、その効果を比較検討した。
【方法】主観的な睡眠の問題を有する60 歳以上の高齢者10 名(男性5 名・女性5 名、平均年齢73.1 ±4.28 歳)を対象とし、指圧先行群・シャム先行群のランダム化クロスオーバー比較試験を行った。1 週間のベースライン、週1 回60 分の施術(指圧又はシャム)を4 週行い、1 ヶ月以上間隔を空けもう一方の施術を同頻度で実施した。ベースライン時に基本特性(性別、年齢、BMI、主観的な睡眠の問題等)、それ以降は各介入前後の計4 回でエップワース眠気尺度、ピッツバーグ睡眠質問票、レストレスレッグス症候群重症度スケール、POMS 短縮版、健康関連QOL 尺度アキュートを実施した。生理学的指標ではアクチグラフィを使用し、ベースライン・各介入4 週間ずつ睡眠指標(睡眠効率、中途覚醒時間)を継時計測した。また、各介入施術前後に血圧・心拍数、心拍変動(平均心拍数、緊張指数、HF〈副交感神経指標〉、LF/HF〈交感神経指標〉)をHeart Sensor TM にて測定した。解析は群間及び群内比較を行った。本研究は北里大学医療衛生学部倫理審査委員会による承認を得て実施した(2020-006B)。
【結果】全ての評価項目で介入内容、介入前後による有意差はみられなかったが、心拍数、心拍変動の平均心拍数、緊張指数は施術後に有意に減少、HF は有意に増加した。
【結語】介入内容による違い、4 週間の介入による変化はみられなかったが、短期的な変化が反映される生体指標(心拍数、平均心拍数、緊張指数、HF)では指圧・シャムともに施術後にリラックスや副交感神経活動優位を反映する所見が得られた。