日本ペインクリニック学会誌
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症例
コンパートメント症候群による下肢の痛みと感覚・運動神経障害に静脈内局所ブロックが著効した1症例
河端 崇御村 光子宮本 奈穂子枝長 充隆
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2012 年 19 巻 1 号 p. 48-51

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抄録

下肢のコンパートメント症候群による痛みと感覚・運動神経障害に静脈内局所ブロックが著効した症例を報告する.患者は32歳の男性で,Marfan症候群に合併した急性大動脈解離で,Bentall手術が施行された.手術中に右大腿動静脈より人工心肺の送脱血管が挿入され,体外循環時間は7時間33分であった.手術後に右下肢のコンパートメント症候群が生じ,減張筋膜切開が行われたが,右足関節より末梢の痛みと感覚・運動障害を生じ,右下腿から足部の浮腫,垂足も発現した.痛みの治療のために当科を紹介された.抗血栓療法を施行中であったので神経ブロックを選択しなかった.下腿に駆血帯を装着し,リドカイン,デキサメタゾンを用いた静脈内局所ブロックを,駆血時間は5分間で,駆血圧は250 mmHgで,8回施行した.ブロック後より痛みは軽減し,夜間良眠できるようになった.また,浮腫と感覚・運動機能が改善し,理学療法も進んだ.駆血時間,使用薬物等に配慮すれば,コンパートメント症候群の病態改善に静脈内局所ブロックは,有用性がある治療法と考えられた.

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© 2012 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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