抄録
多回脊椎手術後に生じた難治性腰下肢痛を訴える5症例に対し,ステロイドを加えた脊髄くも膜下ブロックを実施し,良好な結果を得たので報告する.3回の硬膜外ブロックとメキシレチン150 mgとバクロフェン15 mg(各分3),アミトリプチリン25 mg(眠前)内服を行ったが無効であった5名の高齢者(年齢74~89歳)を対象とした.これら5名に対し,0.5%リドカイン1 mlとデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム3.3 mgを用いた脊髄くも膜ブロックを2週間隔で7回実施し,治療開始から14週が経過したところで,痛み治療の効果を視覚アナログスケール(visual analogue scale:VAS,mm)で評価した.治療前と治療後の痛みは,症例1:74 mm→33 mm,症例2:62 mm→60 mm,症例3:81 mm→5 mm,症例4:78 mm→29 mm,症例5:100 mm→25 mmと,5例中4例で痛みの軽減が得られた.痛みが軽減しなかった症例2では,治療前の腰下肢痛が広範囲であった.ステロイドを加えた脊髄くも膜下ブロックは,多回脊椎手術後の腰下肢痛治療に有用である可能性が示唆される.