レギュラトリーサイエンス学会誌
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原著
薬局における 「副作用シグナル確認シート」 を活用したハイリスク薬服用患者からの自覚症状の情報収集向上に関する調査研究
能城 裕希山中 慎太郎孫 尚孝幸田 恭治北垣 邦彦成川 衛益山 光一
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2022 年 12 巻 3 号 p. 259-270

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抄録

医療関係者は患者に発生した副作用の端緒に気づき,患者が被る恐れのある副作用を可能な限り未然に防止するよう努めることが求められている.本研究では,患者の自覚症状を8項目に分類してイラストを用いた「副作用シグナル確認シート」を服薬指導に活用することで患者が自覚している症状を薬剤師が情報収集しやすくなる可能性を検証するために調査研究を実施した.研究に協力が得られた93薬局において,ハイリスク薬を服用している患者を調査対象とした.はじめに普段行われている服薬指導で,自覚症状の訴えがあった患者に薬剤師が聴取する形式でアンケートを実施した(調査①).次に先行するアンケートと比較する形で通常の服薬指導の際に「副作用シグナル確認シート」を用いて自覚症状の有無を確認した(調査②).また,調査に協力が得られた薬局を対象に事後アンケートを実施した(調査③).統計解析はWilcoxonの符号付順位検定を採用した.調査①,②で回答を得られたのは51薬局であった.(回答率54.8%)調査③では92薬局であった.調査①において相談があった患者17名より訴えがあった自覚症状の数は18件であった.調査②において相談があった患者169名より訴えがあった自覚症状の数は238件であった.調査①と調査②の間で検出された自覚症状の件数を薬局ごとに集計し,比較すると統計的有意差が認められた(p<0.001).「副作用シグナル確認シート」の提示により,患者が薬局薬剤師に自覚症状を相談するきっかけとなったことが示唆される.自覚症状のなかには副作用ではない原疾患による症状や不定愁訴などが含まれると考えられるが,医薬品の服用前後の体調変化に気づくためには,症状を自覚する前の症状の有無を含めた患者の状態を把握しておくことが必要である.

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© 2022 一般社団法人レギュラトリーサイエンス学会
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